猫腎不全
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虚血 とは?猫の腎不全との関係は?

公開日
更新日

 
執筆:碧井 香 (獣医師・獣医学博士)
 
 
虚血 は、腎不全を起こす原因の一つです。しかし、虚血とは聞きなれない言葉で、いったいどのようなことなのか、分かりにくいですね。虚血とはどういう状態か知っておくと、予防することもできます。今回は 虚血 について詳しく見て行こうと思います。
 
 

虚血 とは?人とネコの違いは?

 
虚血とは局所的な貧血のことです。普段、私たちが使っている貧血は全身的な意味で用いており、簡単に言うと、全身を流れる血液が足りない状態です。原因は、出血によってそもそもの血液量が減る場合や、血液を作る機能が衰え血液が減少する場合、または血液を作る材料が不十分なために血液が少ない(鉄欠乏性など)など様々です。
 
これに対して、局所的に血液が足りない場合を虚血と言います。体内には十分な血液があるのに、特定の臓器やある部分にだけ血液が到達せず、酸素が行きわたらない状態です。これは体の中の病態を表す言葉なので、人とネコ に違いはありません。
 
 

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虚血 は何故起こる?

 
腎臓を例に考えてみます。腎臓の役割は主に血液をろ過して尿を作ることですが、この機能を果たすためには腎臓自体が元気に働いていなくてはなりません。腎臓が働くためには栄養が必要ですが、それを運んでいるのが血液です。これはろ過されるために腎臓に向かう血液とは別に腎臓自体に栄養を運ぶための血液です。
 
この栄養を運ぶための血液が何らかの原因で減ったり、全く腎臓に流れなくなってしまうと腎臓は栄養不足となり機能できなくなります。この状態が虚血です。腎臓に栄養を運ぶ血液が極端に少なくなる虚血の原因に、血管が詰まってしまう血栓症があります。血管が詰まるとその先にある腎臓に血液が行きつくことが出来なくなり、腎臓は虚血状態になります。
 
その他にも様々な原因があります。脱水や出血で全身の血液量が少なくなってしまっうと、生命維持に重要な臓器(心臓や脳など)に優先的に血液が流れます。このため腎臓への血液量が減り、虚血状態になります。
 
このように、特定の臓器や部分の血液量が少なくなることを虚血と言い、虚血が続くとその機能が失われます。この状態を虚血性疾患と言いますが、それが心臓の時には心不全、腎臓の時には腎不全、筋肉の場合には虚血部分が壊死したりします。
 
 

虚血 と腎不全との関係は?

 
腎不全には様々な原因があります。濾過される血液量の減少が原因のものを腎前性腎不全、虚血や腎臓に対する毒物の影響で腎臓自体が原因であるものを腎性腎不全、尿管・膀胱・尿道などが詰まってしまうことで起こるのが腎後性腎不全です。腎後性腎不全は急性に起きることが多いです。
 
腎前性腎不全と腎後性腎不全はその原因を取り除けば回復が期待できます。腎性腎不全のうち、腎臓に対する毒性が特定された場合、その毒物の投与を中止し、催吐処置、毒物吸着のために活性炭投与、輸液による毒物の希釈などで対処します。虚血性の腎不全の場合、虚血状態が改善されても、壊死してしまった腎組織はその機能が回復することはありません。慢性腎不全に移行する場合が多く、注意が必要です。
 
 

虚血 の発見、診断、治療は

 
まず、うちの猫は腎臓が悪いと思って病院に行く飼い主さんは少ないでしょう。食欲や元気が低下したり、嘔吐や下痢をしたり、水を飲む量がふえたり、いつもと様子が違う、具合が悪そうだと心配し来院されると思います。
 
猫の様子や問診から、原因を探っていきます。原因が腎臓に絞られると、そこから腎前性か、腎性か、腎後性かあるいは慢性かなど詳しく調べて行きます。血液検査、尿検査、X線検査、超音波検査などにより障害のある部分を特定します。
 
原因が血栓や寄生虫が詰まることによる虚血である場合は、根本治療はそれらを取り除くことですが、腎不全のため全身状態が悪ければ、そちらの対症療法を優先させます。
腎後性腎不全の場合は、尿が排泄されないので、様々な物質が体内に溜まってしまいます。高カリウム血症になると心臓が止まってしまう可能性がありますので、早急な処置が必要です。急性腎不全の場合には死亡率も高いので、迅速な治療が必要です。
 
 

まとめ

 
腎不全は急性・慢性、腎前性・腎性・腎後性に分けられます。
このうち、腎前性と腎後性は原因を取り除くことができれば回復が期待できます。しかし、腎性の場合には死亡率が高く、生命の危機を脱しても失われた腎臓の機能が回復することはなく、慢性腎不全に移行することが多い病気です。その腎性腎不全の原因の一つが虚血です。虚血を防ぐことが腎性腎不全を防ぐことにつながります。
 
虚血の予防としては血栓を作らないためにバランスの良い食餌と十分な飲水が必要です。そして、猫の血栓の発生は、心臓病によるものが多く寄生虫が原因となることは少ないのですが、寄生虫予防も行うことが大切です。
 
 
<執筆者プロフィール>
碧井 香 (あおい こう)
獣医師・獣医学博士。
現在はフリーライターなど多岐に活動。
麻布大学獣医学部卒業 獣医師免許取得、某アニマルクリニックに勤務しながら、同大学院にて獣医学博士号取得、独立行政法人某研究所勤務、アメリカの研究機関勤務を経て今に至る。
 
 

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